境界線
再び折れた高橋の首をもとに戻すと、やはり自信なさげな顔で私を見ていた。
「こら。昼間の私の忠告もう忘れたの?」
まだあどけなさの残る顔。少年のようなつくりをした高橋の顔や困った表情は、どうも私の母性本能をくすぐるらしい。
気づけば、私の方が吹き出していた。
「努力は認める」
少し茶色がかった髪を軽く乱すように撫でると、高橋も自然と笑顔になった。
嬉しそうに笑う高橋に私はどうやら癒されていたようだ。さっきまで抱いていた残業の恨みもすっかり忘れ、私は可愛い後輩の髪をさらにくしゃくしゃに見出してやった。
「ちょっと部長!」
「可愛いね高橋は」
気づけば口に出していた。高橋は顔を赤らめ、頭に乗る私の手を掴んだ。そして高橋は嬉しそうに私に、触れるだけのキスをした。