境界線
私がパソコンを閉じると、部屋はまさにその機械音だけになった。廊下に出るとその音量はさらに増し、隣の部屋に近づくにつれまた大きくなっていった。
私は少々の不安を胸に抱き、ついに隣の部屋の扉を開いた。
開いた途端、私は中にいた意外な人物の姿に目が丸くなった。
「ほぇ!ぶ、部長!」
中にいたのは暗い部屋でコピー機を操作する、この残業の原因、高橋だった。
「た、高橋。何してんの」
「練習してました、コピーの」
コピーなんか練習するものなのか、という疑問は高橋のために黙っておくことにした。
コピー機の受け皿にはざら紙の裏に印刷された資料が大量に乗っていた。コピーにうまいへたがあるかどうかは知らないが、優劣をつけるならば高橋は上達しているように感じた。
「もったいない」
大量の資料をシュレッダーにつっこむと、高橋は慌てて返事をした。
「ざ、ざら紙にしました!」
「インク代」
「あぁ………」