境界線
08
リョウスケのふかふかのベッドで寝静まる高橋を見ながら、私はリョウスケに腕を引っ張られ、無理矢理ソファに座らされた。
「お前、正気か?」
リョウスケは小声で私を諭すように言う。
「さっきの流れで断れるほど私鬼じゃないわ」
「男女が一つ屋根の下で何も起こらないはずないだろ」
「すぐそういう発想するでしょ」
高橋はそんなことしない。
と、言いかけて黙った。
そうだ…私はつい最近…高橋と…
「なぁ、ユリコ」
高橋とのあの夜を思いだし少し速まった心拍数。淡く熱を帯びた体にリョウスケが触れる。
リョウスケの甘い声が耳元まで迫っている。背中越しに高橋の寝息も聞こえる。
「やめて」
「あいつお前のこと好きなんじゃねぇか?」
リョウスケの質問に一瞬体が強張った。その体をリョウスケの腕が包み込んだ。
…高橋が、私を好き?
絶対無いとは言えなかった。だが有りでもない、はず。