あの夏の君へ

追いつけない






三月。

外はまだほのかに寒い。

放課後の教室には吹奏楽部の演奏や、運動部の掛け声が聞こえてきた。

前までならこうして荻をひたすら待ってたのに…。

待ち時間さえも愛しかったのに。

今は待つ意味さえないけど、待ってることが習慣になってるから、学校が終わってもだらだらしてしまう。

ぼんやりと野球部の練習風景を眺めてしまう。

「あはは。未練がましっ…」

どんなに心に言い聞かせたって。

正直やねんもん。



君が好きやねんもん。







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