紅梅サドン
真澄は真澄だった。


あの頃と何も変わらない、真澄のままの笑顔だった。


僕が大好きだった、真澄の笑顔。

太陽の日差しがよく似合う真澄の笑顔。

手にしてはこぼれ落ちる砂みたいに、僕は今まで、何度も何度もーーその笑顔を思い出していた。

その大好きだった真澄の笑顔が、何一つ変わっていないのはーーー。



真澄は今“幸せ”だって事だーー。


僕はただ、鳴り響く鐘の音を静かに聞いた。

静かに息を吸い上げる。

ルノーと次郎がタクシーの中から、こちらをずっと見つめていた。


僕はタクシーに乗り込んだ。

雪子は顔を真っ赤にして、隣に座る次郎にもたれて幸せそうに眠っている。


「もういいの?秋ジイーー。」

タクシーの助手席に座っているルノーがつぶやいた。

「ああ。もう充分だよーー。

付き合わせて悪かったな、何だか。」




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