アイ・ラブ・おデブ【完結】
最近やっと見慣れた街並みと別れ、背の高い建物に囲まれ始めると、ついドキドキしてしまう

大人と呼ばれるこの10年、過ごしてきた場所だが、初めて暮らし始めた頃の気持ちが腹の底に眠っていたのを知らされる

毎日このビルの1つでいかにも都会に慣れた顔で仕事をしてきた

けれども長く暮らしていても根底にある田舎育ちは消えることはないらしい

「ハル…毎週会いに来てくれてありがとう
美味しい料理もありがとう!
あんなにたくさんの料理…大変だったよね…
でもお陰で…毎日…毎食、ハルといるみたいだった」

「うん…僕も色んな料理を作りながら、さあやのことを想っていたよ
寂しさも紛れた…でもやっぱり…近くにいたいな」

ハンドルを握る手が一瞬離れて小夜の頬を優しくなぞる

…あたしも…傍にいたいな…

撫でられた頬から遥の想いが流れ込んでくるようだった
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