アイ・ラブ・おデブ【完結】
閉まりかけのエレベーターに小夜は滑り込み、中央に立つ遥の後ろに隠れるようにして乗り込んだ

遥のシャツの裾をそっと握り、エレベーターが静かに上昇する音に耳を傾けていた

「さあや…」

愛しい人の甘い声が自分の名前を呼んだ時、目的の最上階に到着した

どんな甘い顔で呼んだのかを見る間もなく、遥は開いた扉の向こうへ連れ去られた

「お帰りなさいませ」

中から開いたドアの向こうからは、シンプルなスーツを着た中年の金髪女性が出迎えた

彼女の流暢な日本語にも驚いたが、更に驚いたのは玄関の広さだった

…いったいこの玄関…何畳あるの?
あたしのアパートの部屋が全部入っちゃうよ

広さだけではない
置かれている調度品や大きな花瓶も天井から吊り下げられているシャンデリアまでもが超一流品のオーラを感じる

…ここは個人のお宅なの?
マリー・アンなんとかでも出てくるんじゃない?
パンが買えなければケーキを…だっけ?
そうよ!ベルサイユ…ここは…
蛇の棲むベル薔薇宮殿だよ!

小夜は一人で心の突っ込みをしているうちに二人を見失ってしまった
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