アイ・ラブ・おデブ【完結】
「少し話せるかな…」

真剣な表情のマサにテラス席に連れられてきた

話し出しずらそうに窓の外に視線を向けたまま、マサは切り出した

「小夜さんの力になりたかったけど…
ごめん…
アイツの気持ちを変えられなかった
日本にひき止められない」

マサが毎日遥と話し合っていることは知っていた

小夜はもう一度遥と向き合うために、冷静な気持ちを取り戻す時間が必要だった

これまでマサが説得をしていたが、その頼みの綱も切られてしまったらしい

「アイツ…昔から頑固なんだよな…
見た目はあんなに柔らかなのに…
頭ん中はカチンコチンに固いんだよ
自分の信念を曲げないというか…貫き通す…」

悔しそうに拳を握り、足元を睨んでいる

…そう…いつもハルは真っ直ぐに前を向いて進んでいた
今は…前なんか見ていない
見えていないんじゃないかな…
そうだよ…きっと何も見ようとはしていない…

「…あたしもう一度話してみます!
今のハルは…ハルじゃない気がする
ちゃんといつもの…前を向いているハルが決めた事ならあたし…あたしも…
…受け入れなくちゃ…」

マサの顔を真っ直ぐに見つめて小夜は淋しそうに微笑んだ

「…ごめんな…
俺じゃ力になれなくて
今日は香織達もいるから店は大丈夫…遥の所へ…
マンションに…今日はいると思う」

見上げた先のマサの目元に隈をみつけ、離れていく親友を想う気持ちが表れているようだった
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