アイ･ラブ･おデブ【完結】

「コホンッ！」

わざとらしい慎太郎の咳払いが聞こえ、止まっていた遥と小夜の時が動き始めた

「あっ…ええ～っと…
こんばんは…違った…
えっと～…久しぶり…
げ…元気そうだね…よかった…うん…よかった…
あっ…き…今日は薔薇を見に来たの？
偶然だね！ここの薔薇…本当に凄いよね！
あたし…こんなに沢山の種類があるの知らなかったんだ
慎太郎さんのお母様が育ててるんだって！
凄いよね～！」

自分の手をモジモジと動かしながら地面を見つめ、早口で独り言のように話した

「小夜！コイツの顔に一発お見舞いするんじゃないの？
アンタが出来ないなら…変わりに…」

由美子が右手の拳を固くすると黙って見ていた慎太郎が止めに入った

「山岡さん…今殴るのは得策ではありません
話を…お気持ちを確かめてからにしましょう！
その時にはあなたの大切な右手を汚すことなく、私のこの手で…」

人など殴ったことの無いような繊細な指を見つめて言った

「さっ！お二人は温室の中へどうぞ
私たちは…邪魔をしてしまいそうなので…退散いたします」

そう告げると扉を開き、小夜の背中をそっと押して中へと促した