アイ・ラブ・おデブ【完結】
「さあ…笹原さんも中へどうぞ」

固い表情で慎太郎を見つめたまま、扉の中へと入れられてしまった

…おいっ!さあやと二人にするのか?
って…名前をなぜ…

まだこの状況を理解できぬ二人が温室の中に放り込まれ、外の世界から切り離された

「奥に…椅子があるの…」

少しの沈黙の後、小夜はそう震える声で告げると顔を上げぬまま歩きだした

その後ろに導かれるようについて行き、作業スペースの一角にある小さな休憩用の椅子に座った

その椅子は二脚とも温室内を見渡せるように並んで置かれている

この張り詰めた空気の中、向かい合って座らなくて良かったと遥はホッとした

どのくらいの時間が経ったのだろうか…甘い薔薇の香りがより一層強まり、沈黙の二人の周りを優しく包み込んだ

「今…どこに…住んでいるの?」

作業台の上に並べられている道具を見つめ、小夜がボソリと聞いた

「あ…あぁ…
自転車であちこちに…
決まった所には住んでいないんだ…」

緊張のあまり、上擦った声が出てしまった
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