シンデレラとバカ王子
「そのハイネという名前は、本当の名前なのか?」

「さぁ?どうでしょうか?ご想像にお任せします」

「手強いな。気まぐれな猫のようだ」

王子様が喉の奥で笑った声がした。

「では本名だということにしよう。その髪と目に由来した名前だと。それに君はオレと同じハーフじゃないのか?その髪の色と目はわが国の者にでる色だ。それにハイネには『春の月』という意味がある」

王子様の国では自分の名前に『春の月』という意味があると教えてくれた。漢字にするとぱっとしない名前でも、よその国の言葉では、綺麗な意味になることを知った。

「寒い冬の間は雲の奥に隠れ、春の風により姿を見せる春の月は、一年のうちで一番美しいといわれている。両親がその言葉を知っているのであれば、それを名づけるのも分かる」

「そうなんだ」

悪い気はしない。

私の名前は母が親友との約束の証だと教えてくれたことがあった。母の親友が遠くに行ってしまうときに、自分が女の子を産んだらハイネと名づけると。そして、親友は男の子を生むと、そしてその子どもを結婚させよう。とまるで幼子のような約束をしたと。

小さかった私は、どこかにいるかもしれない結婚相手に、心を弾ませた。今の私は会ったこともない相手とどうこうなるつもりはないし、結婚願望がない。


それ程の約束をした、母の親友という人は母の葬儀にもあわられることはなかった。
< 14 / 25 >

この作品をシェア

pagetop