七つの椅子
その足は何の迷いもなく、小さな店の並ぶ商店街を抜ける。
そして大きな教会の前で立ち止まった。
「消えた」
「へ?」
エレナは協会を見上げながら静かに呟いた。
「運の椅子の“気”が消えたの」
綺麗な教会から視線を俺に移す。
「ここで?」
「そう。ここで。だからこの教会が怪しい」
腕を組み仁王立ちで再び教会を見上げた。
「じゃぁ…どう、すんの?」
「入る」
エレナは俺の腕を引っ張り、数段の階段を上がって教会の大きな二枚扉を押し開ける。
「あの…すいませーん……」
エレナは綺麗な発音のフランス語で、声を掛ける。
天井の高い教会内に反響する。
奥の小さな木製の扉からシスターが現れ、エレナが話しかける。
昔、母親の友達にフランス人が居たのでフランス語講座をしてもらい、聞き取る事は出来るのだが話すのは得意ではないので、シスターはエレナに任せた。