七つの椅子
シスターの顔を見ていると話を振られそうなので、俺は視線から逃れる様に教会を見回す。
貴族がダンスパーティーでも開けそうな、とても広い教会。
教会が一般的な所ではこの広さが普通なのかもしれないが、不慣れな俺には広過ぎるとも言える。
そのせいか聖母マリア像が小さく見える。
クリーム色の床がツヤツヤで鏡の様に天井を映し出し、足元にはもう一つの世界が広がっていた。
エレナはこの教会が怪しいと言っていたが、見たところ長イスばかりで一人掛け用の単調な椅子は見当たらない。
マリアを挟んで左右にシスターが出て来たのとは別の木製扉があるが、その向こうにでもあるのだろうか。
大きなステンドグラスから差し込む光がマリアを七色に輝かせている。
その光景は神秘的で思わず見とれてしまう程美しいものだった。
「…りゅ…じ……竜治、ねぇ竜治ってば!」
「んあ?どした」
エレナに肩を叩かれ、声のする方へ振り返る。
「どしたじゃないよ。さっきから呼んでるのに気付かないんだもん」
何度も呼ばれていた様だが、七色に輝くマリアに見とれていた俺は全く気付かなかった。