キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
騎士は衝撃を受けた。


魔法とは、高度なものであればあるほど習得に長い年月を費やすと言われている。


たった今彼女が使った魔法は、この世の物質を一瞬で消滅させた。

こんな魔法は、老練な白髪の魔法使いが使うようなたぐいのものではないのか。


しかし目の前のあどけない少女の年齢は、多く見積もっても十七歳くらいか──コットンキャンディーのようなストロベリーブロンドの下の童顔は、十五歳くらいにも見える。


そう考えて、騎士はある可能性にたどり着く。

魔法使いの見た目の年齢はあてにならないのだ。
魔法とは、姿を若く保つこともできるものらしい。


つまり、十七歳くらいの小娘の見た目ではあるが、
目の前の魔法使いは齢を重ね長年にわたって魔法の腕を磨き上げた、はるか年長の人間ということかもしれないのだ。

「魔法使い、貴様何歳だ?」

「んーと、十七歳くらいかな」

見たままの小娘だった。

彼より二つ年下である。


「ばかな」

ふわふわと春の野花のように柔らかな笑みを浮かべている娘を、騎士は畏怖を込めて見つめた。




「お前のような小娘が、世界最強の魔法使いと呼ばれる【霧のシムノン】だというのか──」




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