俺様男子と毒吐女子
じっとそのまま動かず、相手を見ていると下を向いていた目線が不意に上がった。
「....っ。」
その少し見開いた目からは驚きの色が見て取れる。
それだけでも俺の胸に広がる満足感。
なんなんだろう。この感覚。
どんなイイ女を抱いても、こんな満足感はなかった。
むしろ、喪失感しかなかったのに。
こいつに関わるだけで、こんなに満たされる俺がいる。
嬉しく思う俺がいる。
物凄く、
貪欲に、
こいつが欲しいと思う俺がいる。
だから、俺は、知らん顔で俺の横を通り過ぎようとするこいつの腕を咄嗟に掴んでしまったのかもしれない。
捕まえてやる。
絶対に。
欲望に忠実な俺は、まだ気付いていなかった。
とっくに、俺の方が先に、彼女、佐久間夕に捕らわれている事に。