始末屋 妖幻堂
「・・・・・・おぅ、怖くなったか? 大人しくしてりゃ、姉ちゃんには何もしねぇよ。ま、後で一緒に伯狸楼に来てもらうことにはなるだろうがな」

「小菊に負けない上玉だ。姉ちゃんを連れ帰って、小僧を始末すれば、いい加減楼主も気を静めるだろう」

 鎖鎌を手にした男が、狐姫に近づきつつ言う。
 この鎖で、狐姫を縛り上げようというのか。
 狐姫が、僅かに顔をしかめた。

「それだけでは、呶々女が戻ってこれぬ。とにかく我は、小僧を捜さねば旦那に叱られる。旦那の怒りを買えば、悪くしたら呶々女と引き離されるやもしれぬ。お主ら三下と、長々語らう気などないのだ」

 わざとか、と思えるほど、牙呪丸は男たちの神経を逆撫でしていく。
 思ったことを思ったときに口にするので、周りの空気はまたしても一瞬にして凍り付いた。

「お前も連れ帰ろうと思ったがな! お前は無傷じゃ済まねぇぜ! 俺たちにそんな口利いたことを、たっぷり後悔させてからだ!」

 手前にいた男が、匕首をぶん、と振って叫んだ。

「悪くしたら死ぬかもしれんがなぁ、兄ちゃんが悪いんだぜ。口の利き方ってものがあるんだからな」

 相当頭に来ているのだろう、突き出した匕首の切っ先が、ぷるぷる震えている。
 牙呪丸は目の前の匕首にも動じず、冷めた目を男に向ける。
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