始末屋 妖幻堂
「旦那が手ぇ貸してくれりゃ、百人力だ! 良かったな、小菊」

 自分のことのように嬉しがる小太に、娘も笑みをこぼした。
 そして、娘は改めて男に頭を下げる。

「何とぞ、よろしゅうお願い致します。伯狸楼(はくりろう)の小菊と申します」

「伯狸楼・・・・・・」

 男と狐姫の目が鋭くなる。

「あの、何か・・・・・・」

 なかなか敏感な娘だ。
 男と狐姫の様子に気づき、小菊がおずおずと尋ねた。

「いや」

 一つ息をつき、男は煙管の雁首を、かつんと打ち付けると、少しだけ口角を上げてみせた。

「俺はこの店の主・千之助(せんのすけ)だ。これは狐姫。他にもいろいろいるがな。化け物小屋だが、ま、身を隠すにゃ、打って付けだろ」

 不思議な化け物小屋に、食客が一人増えた。
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