始末屋 妖幻堂
「旦さんの見立てでは、小太の死体が見つかれば、店の者の術は簡単に破られるほどのモンだ。おそらく、ちょいと衝撃を与えられれば破れるってこったろ。まぁそう無理矢理破った後に、どう影響するのかはわからないけど」

 だから、小菊から生国(くに)のことを聞き出すときも、催眠術で緩やかに聞き出したのだ。
 ただでさえ記憶をいじるということは、危険を伴う。
 脳みそをいじるからだ。

「ふむ・・・・・・。我なら跡形なく葬り去れるがな」

 くくく、と牙呪丸が低く笑う。

「でもあんたは、好き嫌いするもの。さっきの男どもだって、あんたが食ってくれりゃ、簡単だったのにさ」

「馬鹿を言うな。あのようにむさい男を五人も六人も食ったら、腹を下してしまうわ」

「ふん。これが呶々女の頼みなら、素直に食うくせにさ」

「呶々女はそんな無茶な頼みはせん」

 どうやら二人の会話から、牙呪丸が『食う』というのは、本当に食事的な『食う』という意味らしい。

 小菊は先の牙呪丸の姿を思い出した。
 牙呪丸の本性は、大蛇のようだ。
 あれほど大きな蛇なら、人間を丸呑みすることぐらい、訳ないだろう。
 改めて、ぞく、と背筋を怖気が走る。

「とにかく、もうあんたが帰ったところで、小太が帰る保証はないってこった。それどころか、あんたが帰ったお陰で、小太の命はなくなるかもしれない。小太のことを思うなら、伯狸楼の者にゃ、とっ捕まらないようにするこった」

 狐姫の言葉に、小菊はこくんと頷いた。
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