始末屋 妖幻堂
「そこのところは、俺の唯一の武器である、コレに物を言わせてよ」

 ちょいちょいと己の頬を指す。
 整った顔を武器に、女子をたらし込んできたのだろう。

「そんなお前さんが、清に接するうちに、真面目になろうと思ったわけか?」

 は、と千之助は、馬鹿にしたように笑った。
 所詮は青臭い鄙の若造か。
 いっぱしの小悪党を気取っていた外れ者が、純真な娘に、ころりと参ったとは。

---馬っ鹿馬鹿しい---

 冷めた目で、千之助はしゃがんでいる佐吉を見下ろした。
 永く生き過ぎた故か、ヒトの域から出た故か。
 こんな青臭い恋物語、反吐が出そうなほどくだらない。

『擦れっ枯らしってのぁ、旦さんみたいなんを言うんだよね』

 千之助にしか聞こえない小声で、狐姫が呟いた。
 ふん、と鼻を鳴らすと、千之助は傍の壁にもたれかかった。

「真面目っても、すでに俺は親父に勘当されたような奴だ。できることなんざ、知れてるさ。しかも、やっぱ根っこが不純だからよ、どうせやるなら、清が喜ぶことをしようってとこに行き着くのさ。何とかして、関心を惹きてぇんだな」

「そこまでせんでも、お清はお前さんに惚れてたんじゃねぇのかい」

 内心『ガキかよ』と思いつつ、千之助は興味なさげに相槌を打つ。
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