始末屋 妖幻堂
「ったく、乱暴な奴だなぁ。いくら人形だからって、壊れるほど蹴飛ばすことはあるめぇ」

 隅に寄り、人形を拾い上げる。
 普通の人形よりは大きいが、人間ほどの大きさはない。

 杉成は小さくはあったが、十歳ぐらいの童に見えるぐらいの大きさはあった。
 千之助の作るモノたちは、さすがに動くとき以外は、等身大ではないようだ。

「あ~あ、腕がもげてやがる。可哀相にな」

 人形に戻った杉成は、もうどこをどう見ても、人間には見えない。
 木と紙で出来た、からくり人形だ。

「後で直してやるからな。じゃ、禿に頼むか」

 無事かなぁ、と呟きながら、部屋の奥に向かって、ぱちんと指を鳴らす。
 ごそごそ、と何かが動く気配がし、散々散らかったおもちゃの類を掻き分け、おかっぱ頭の童女が駆け寄ってきた。

「お前さんは、どこも痛めなかったかい。俺ぁちょいと出てくるからよ、こいつの面倒見てやってくんな。布団敷いて、寝かせてやってくれ」

 ちょいちょいと佐吉をつついて言う千之助の言葉に、童女はこくんと頷くと、ぱっと身を翻した。
 千之助は、続けざまに指を鳴らす。
 おもちゃの山から、わらわらといろいろな童子・童女が駆けだしてきた。

「さ、皆でこいつを奥に運んでくんな。あと、もし俺っちがいねぇ間にまたヤバい奴らが来たら、容赦せんでいいぜ。蹴散らしてやんな」
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