始末屋 妖幻堂
 ちょろちょろと横たわる佐吉に取り付くと、童子らは皆で佐吉を抱えて運び出す。
 表情の一切無い小さい子供が、皆で大の男を運んでいく様は、はっきり言って不気味である。
 佐吉が今目を覚ましたら、きっと悲鳴を上げるだろう。

「おさんが出張ってきたってことは、もうお前さんのことも、ばれてるってこったな」

 すでに牙呪丸が人外だということは、おさんにはばれている。
 ここで散々戦ったのだ。

「じゃ、お前さんを連れて行っても、もう構わねぇよな」

 顎で戸を示し、千之助は踵を返した。
 牙呪丸が後に続く。
 花街は目と鼻の先だ。

『旦さん、あちきも』

 とん、と素早く肩に飛び乗る狐姫に、千之助は少し考えた。

「そう・・・・・・さな。あちらさんは多分、おさん以外はただのヒトだろ。わざわざ狐姫が出張るほどのもんでもない分、危険もないだろうな」

「九郎助の旦那が暴れ回っているやもしれぬぞ」

 実際九郎助とおさん狐が暴れ回ったのを目の当たりにした牙呪丸が言う。
 妖幻堂の中を、あれだけめちゃくちゃにしたことを考えれば、なるほど、別の危険があるかもしれない。

「ま、狐姫のことは、九郎助が守ってくれるだろ」

『あん旦さん。あちきのことは、旦さんが守ってくれるだろ?』

「己の身ぐらい、己で守らぬか」

 三人三様、言いたいことを言いながら、千之助たちは花街に向かった。
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