始末屋 妖幻堂
『・・・・・・全く、あんたに会っちまうとは。私もつくづく、運がない』

「ご挨拶だね。俺っちだって、この見世にゃ近づきたくなかったさ。色里は俺っちのシマだぜ。不穏な空気が流れりゃ、すぐわかる。お前さんがここにいたのだって、すでに知ってたさ」

『ふ。さすが千の旦那だ』

 首根っこを掴まれたまま、おさんは自嘲気味に笑った。

「裏見世で女子をいたぶるだけに留まらず、阿片なんてものにまで手を貸すなんざ、いくらお前さんでも許されねぇぜ」

 おさんは、ちら、と千之助を見た。

「俺っちの知るおさん狐は、女子の敵ではあったが、そこまでの悪たれじゃなかった」

『確かにね。ここで初めて、ただ女子をいたぶるだけの余興ってものを知った』

 散々九郎助にやられたお陰で、おさんは最早、抵抗する気力もないようだ。
 ぽつぽつと話し出す。

『千の旦那。旦那はもっと、私を知ってるはずだろ。確かに私は、恋人の仲を裂くのが大好きだ。恋人や女房のいる男を誑かして、女子が悲しむのが面白くて堪らない。けどねぇ、ただ女子を肉体的に苛めるだけに、何の楽しみがあるってのさ』
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