始末屋 妖幻堂
「・・・・・・邪魔の、し甲斐があるだろう?」

 にやりと笑う。

「確かにな。それだけ一心に想った男が他の女に取られちゃ、女子の嘆きも並みじゃねぇわな」

 渋い顔で、千之助が相槌を打つ。
 おさんは楽しそうに、一つ頷いた。

「それに、遊女は自尊心も高い。惚れた男が市井の女に取られたら、まぁ諦めもつくが、同じ遊女に取られてみな。そりゃあ後が面白いだろ」

「・・・・・・俺っちは、そんな泥沼にゃ関わり合いたくねぇな」

 考えただけでもぞっとし、千之助は己の肩を抱いた。
 考えてみれば、今も狐姫とおさんの間で火花が散っている。
 それだけでも、千之助的にはうんざりだ。

「言いたいことがあるなら、とっとと言え。我々は、お前と心中する気はないのだ」

 九郎助が、苛々と言う。
 そろそろ天井がヤバそうだ。

「そうだった。お前が何で廓に入り込んだのかはわかった。それよりもさっき、お前さん、ここの裏見世のこと、良く思ってないみてぇだったな? 裏に手を貸してたわけじゃねぇってのか?」

 早口で、千之助はおさんに問うた。
 裏を仕切っていた男衆は、皆始末した。
 中には息のある者もいるかもしれないが、五体満足な者はいない。

 それに、この炎だ。
 ここから助け出す気もない。

 おさんだって、男たちと同じく裏に協力していたのなら、許すわけにはいかないのだ。
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