始末屋 妖幻堂
「あのな、佐吉は確かに、どうしようもねぇ野郎だよ。でも、そんな奴でも、お前さんだけは、守ろうとしてたんだぜ」

「だって・・・・・・だってあたし、佐吉さんに言われたとおりに待ち合わせ場所に行ったのに、そこに狙ったように、あいつらが・・・・・・。それに、あたし見たもの。あたしが取り押さえられて、連れて行かれるときに・・・・・・木の陰に、佐吉さんが・・・・・・」

 すっかり記憶が戻ったようだ。
 泣きじゃくりながら、訴える。

「そいつはなぁ、佐吉の迂闊さ故なんだが。男らにとっ捕まる前に、佐吉はお前さんと、どこぞに逃げるつもりだったんだと。ちっとの差で、男らに先を越されたわけだな。そもそもあの日、佐吉は男らと会う予定は、なかったんじゃねぇか? いきなり来られて、焦ってお前さんのところに走ったが、一歩遅かったのかもな」

 小菊は答えず、突っ伏したまま泣き続ける。

「・・・・・・お前さん、ここに来たのぁ、小太の店で、客が見張りの気を引いたからだって言ってたな。その客が、佐吉だよ」

 激しく上下していた背中が、ぴた、と止まる。
 小菊が、涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。

「・・・・・・え?」
< 405 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop