始末屋 妖幻堂
「ま、小太は若いからな。そのうち素直に感謝できらぁ」

 自分も若いくせに、年寄りじみたことを言う。
 それとも若いのは見てくれだけで、実は相当年寄りなのか。
 正体不明のこの男は、そう言って部屋に上がった。

「旦さん、今日も、よぅ売れたようだねぇ」

 狐姫が行李を覗き込んで言う。
 店を出るときに入っていた商品は、ことごとく売れ、代わりに金の詰まった袋が入っていた。

「ま、俺っちにかかれば、こんなもんよ」

 へへっと笑う男は、花街の遊女が骨抜きになるような美貌でもない。
 が、とにかく口が上手いのだ。

 いや、口が上手いというのは多少語弊があるか。
 話が上手で、面白いのだ。
 あまりの上手さに、元は幇間だったとかいう噂もある。

「それはともかく、おい小太」

 不意に男が、ひょいと長持に貼り付く小太を振り向いた。

「おめぇ、その中に何隠した?」

 ぴき、と小太が引き攣る。
 狐姫が、あちゃ、と小さく唸って頭を抱えた。

「だっだだだだ旦那っ・・・・・・」

 明らかに狼狽しながら、小太がわたわたと言い訳しようとする。
 が、無駄なことだ。
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