執着王子と聖なる姫
再び腰を引き寄せ、唇を重ねたままでTシャツの中に手を滑り込ませて胸元を弄ってやる。案の定体を強張らせたセナが、唇を離すと同時にふぅっと短く息を吐いた。

「こうゆうことするよ?もっと先まで、今まで我慢してきたこと全部」
「それは…」
「今更嫌だとは言わせねーからな」

手の動きはそのままに、徐々に甘くなって行く吐息をkissで呑み込む。

欲しいと言ったのはセナだ。だから俺は与えてやる。体から少し狂気めいた想いまで全て。その代わり、全てを貰う。多少想いの重さは違えど、立派な交換条件だ。


「お前は、俺のモノ」


いつだって、対で着けているピアスが互いを繋いでいる。こうして求められる日を心待ちにしていたのだ。色々と焦らしながら、俺色に染めながら。

「家帰るぞ」
「はい」

手を引いて、夜風に当たりながら帰路につく。

おおかた両親に何か吹き込まれたのだろう。だから、俺達を見送る二人に違和感を感じた。おかげで良いタイミングを得たから責めるつもりは無いけれど、少し癪に障る。

なので、唇の前で人差し指を立て、静かに入るようにセナに言い付けた。

そっと扉を開くと、案の定甘ったるい声が聞こえてくる。よくもまぁ…いつ俺達が帰って来るかもわからないのに、リビングで堂々とそんなことが出来るものだ。本当に…立派な両親で涙が出そうだ。

「何ですか?」
「いいからそっと上がれ」

コソコソと話しながら、ゆっくりと音を立てないように階段を上る。抜き足差し足で廊下を歩き。ちょうど部屋の前に辿り着いたところで声をかけた。

「丸見えだけどー」

驚いた母が慌てていたけれど、そんなものは無視だ。誰が好き好んで両親のそんな場面を見たいものか。さっさと背を向けて扉を開くと、ついでにセナをそこへ押し込む。そして、振り返って宣言した。

「ごゆっくりどーぞ」

返答は求めていない。これは察しの良い父に対する宣言だ。邪魔をするなよ、と。

バタンとわざと大きな音を立てて扉を閉めると、灯りを点けないままでセナをジリジリとベッドサイドまで追い詰めた。ボスッとベッドに腰掛けたのを確認して、わざと耳元で甘い声を出す。


「俺から逃げられると思うな?覚悟しろ」


そのまま押し倒したセナが、甘い声を響かせるまでに数分。悲痛な声を上げるまでに数十分。

こうして俺達は漸く「恋人同士」になった。
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