執着王子と聖なる姫
渡された生地を手に悩む愛斗と、スラスラと紙に鉛筆を滑らせるレベッカ。いつも通りに二人で向かい合い、いつも通りに無言の時を過ごしていた。
そこへ姿を現したのが、怒り未だ冷めやらぬメーシーである。
「お邪魔するよ!」
「どーぞ」
「まったく…何を考えてるんだよ、何を!信じられないよ!」
「何も考えてないっすよ、多分」
「あれがトップアーティストだなんて聞いて呆れるよ!」
「落ち着くデース、MEIJI」
ぷりぷりと怒るメーシーにグラスを差し出し、レベッカはペットボトルからアイスコーヒーを注いだ。それに難色を示したのは、ストローを咥えていた愛斗だ。
「これもそれ?」
「お手軽デース」
悪びれもせず言うレベッカに、愛斗はストローを口から離してグラスを押し返した。
「ヤダっつってんだろ」
「ワタシもオシゴト忙しい。ワガママ言わないでクダサーイ」
「普通に喋れよ。朝からうぜーな」
そう言って眉根を寄せた愛斗に、レベッカはふーっとわざと大きな息を吐いて肩を竦め、フルフルと小さく首を振った。
「MEIJIの前デース」
「どの道すぐバレるって」
「それもそうか」
一度コクリと頷き、レベッカは諦めたように肩を竦めてペットボトルのキャップを締めた。そして、イヤだイヤだと小さく首を振り、ソックリな顔をした親子を交互に見た。
「恐ろしい親子ですね」
「聖奈のマネすんのやめろ」
「愛してるくせに」
「うるせーよ」
捕まえようと伸びてきた愛斗の手を上手く避け、レベッカはペットボトルを手にしたままメーシーの傍に寄り添う。それを見た愛斗が、心底嫌そうな表情で言葉を押し出した。
「お前…メーシーに手出したらマリーが面倒だからやめろ」
「ん?俺?」
「私、年上が好き」
「おやおや。それは光栄だ」
「愛人にどうですか?MEIJIのためなら、何でも頑張りますよ」
そう言って明るく笑うレベッカに、さすがのメーシーも驚きを隠せなかった。
「ムダだって。その人マリーにしか興味ねぇし」
「いや、そんなことも無いけど…ね」
「愛人にしてくれます?」
首を傾げた拍子に見事なブロンドがさらりと揺れ、まるで条件反射の如くそれを掬ったメーシーは、思考を絡ませたままそっとそこに口付けた。
「俺の愛人になりたいの?」
「たまには若い女もいいですよ」
「ふふっ。やっぱり面白い子だね、君は」
流暢な日本語と、女の表情。
レベッカの新しい一面を知ったメーシーは、「これは楽しそうだ」と笑いを噛み殺した。
そこへ姿を現したのが、怒り未だ冷めやらぬメーシーである。
「お邪魔するよ!」
「どーぞ」
「まったく…何を考えてるんだよ、何を!信じられないよ!」
「何も考えてないっすよ、多分」
「あれがトップアーティストだなんて聞いて呆れるよ!」
「落ち着くデース、MEIJI」
ぷりぷりと怒るメーシーにグラスを差し出し、レベッカはペットボトルからアイスコーヒーを注いだ。それに難色を示したのは、ストローを咥えていた愛斗だ。
「これもそれ?」
「お手軽デース」
悪びれもせず言うレベッカに、愛斗はストローを口から離してグラスを押し返した。
「ヤダっつってんだろ」
「ワタシもオシゴト忙しい。ワガママ言わないでクダサーイ」
「普通に喋れよ。朝からうぜーな」
そう言って眉根を寄せた愛斗に、レベッカはふーっとわざと大きな息を吐いて肩を竦め、フルフルと小さく首を振った。
「MEIJIの前デース」
「どの道すぐバレるって」
「それもそうか」
一度コクリと頷き、レベッカは諦めたように肩を竦めてペットボトルのキャップを締めた。そして、イヤだイヤだと小さく首を振り、ソックリな顔をした親子を交互に見た。
「恐ろしい親子ですね」
「聖奈のマネすんのやめろ」
「愛してるくせに」
「うるせーよ」
捕まえようと伸びてきた愛斗の手を上手く避け、レベッカはペットボトルを手にしたままメーシーの傍に寄り添う。それを見た愛斗が、心底嫌そうな表情で言葉を押し出した。
「お前…メーシーに手出したらマリーが面倒だからやめろ」
「ん?俺?」
「私、年上が好き」
「おやおや。それは光栄だ」
「愛人にどうですか?MEIJIのためなら、何でも頑張りますよ」
そう言って明るく笑うレベッカに、さすがのメーシーも驚きを隠せなかった。
「ムダだって。その人マリーにしか興味ねぇし」
「いや、そんなことも無いけど…ね」
「愛人にしてくれます?」
首を傾げた拍子に見事なブロンドがさらりと揺れ、まるで条件反射の如くそれを掬ったメーシーは、思考を絡ませたままそっとそこに口付けた。
「俺の愛人になりたいの?」
「たまには若い女もいいですよ」
「ふふっ。やっぱり面白い子だね、君は」
流暢な日本語と、女の表情。
レベッカの新しい一面を知ったメーシーは、「これは楽しそうだ」と笑いを噛み殺した。