執着王子と聖なる姫
俺と妹の部屋には、仕切りになる壁が部屋の半分までしかない。しかもその壁も、天井までは届いてはいない。

残りの半分は父が気を利かせて天井から付けたロールカーテンで仕切られているので、そのロールカーテンさえ開ければいつでも行き来が可能になっている。

そんな不思議な造りの隣同士の部屋で、俺と妹は生活している。


NYで暮らしていた頃は、二人で一部屋を使っていた。今度も当たり前にそうだと思っていた俺は、それぞれに部屋が与えられると聞いて喜んだ。これで気兼ねなく女が連れ込める!と。

が、現実はそんなに甘くはなかったのだ。

こんな造りの部屋では、連れ込んだとしても何も出来やしない。何かしようものなら、妹が飛び込んで来るだろう。もっと夢のある現実でも良いのではないかと思う。特に青少年にとっては。

「なぁ、レイ。今朝の男誰よ?」

こんな時、この部屋の造りは便利だと思う。互いに机に向かいながらでも声が届くのだから。

「クラスメイトよ」
「お前アイツのこと好きだろ」
「ちっ…違うわ!」

慌てて何かを落とした音が聞こえる。これは図星だ。そう確信した。

「明日からアイツと一緒に学校行けよ」
「どうしてよ!マナが一緒に行ってくれるって約束だったじゃない!」

ガタンと音がして、スルスルとロールカーテンが上がる。基本的に、俺がこのロールカーテンを上げることはまず無い。上げるのはいつも決まって妹だ。

「どうして?レイのこと嫌いになったの?」
「ちげーよ」
「だったらどうして?」

母親譲りの大きな目をうるりと潤ませ、ギュッと足元にしがみ付く。そんな捨てられた子犬状態の妹を膝の上に引き上げ、ゆっくりと頭を撫でる。それにゆるりと目を細める妹は、どこからどう見ても美少女だ。

こんな美少女ならば、kissをしたいとも思う。いや、自分の母親と瓜二つだからそんな気は起らないけれど、あくまでも「美少女ならそんな気も起る」という話だ。
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