カローレアの金
「『格技大会』…だってよ親父」
「お‼今回の優勝賞品は何だ?」
「えーっと…賞金と兵隊への入隊許可…だってさ。受け取り拒否は不可能、どちらも受け取ること…」
「ちっ。賞金は欲しいが入隊には興味無ぇ」
「…私出ようかな」
「はあ?」
ジャンは頭の後ろで手を組んだ。
「『格技大会』ってよ、何でもありのケンカみたいなもんだろ?そこで力試ししてみてぇなぁ…」
「…出場条件は?」
「十五歳以上の男子」
「無理だな」
「いける」
ジャンは組んだ手を離して、アンを見据えた。
「アン、お前は女だろ?一応。それに優勝しちまったらどうする?」
「ばれねぇよ。優勝しそうになったら負ければいいだろ。それか途中で抜ける。」
「そういう問題じゃ………。いや…」
ジャンは額を叩きながら考え始めた。
そして指を鳴らし
「いいこと思いついた。この大会でひと儲けするか」
「できんのか?」
「ああ。お前が頑張ってくれればな」
「…今は作戦聞かないでおくよ。ジルがいる」
アンはきょとんとしているジルを見て、ジャンの話を止めた。
そしてジルを椅子から下ろし、こっちだ、と手を引っ張る。
「何だよお前、ジルのことなんだかんだ可愛がってんじゃねーか。アン姉ちゃん」
「黙れクソ親父」
アンはジルと共に小屋を出て、その斜め前にある小屋へと向かった。