甘い誓いのくちづけを
ドキリ、大きく高鳴った胸が、緊張を呼び起こす。


浮かれてばかりですっかり忘れていたけど、思い出したそれはあたしの体を固くさせた。


「ごめんね、待った?」


「いっ、いえ……っ!」


必要以上に首をブンブンと横に振るあたしを見て、理人さんがクスクスと笑った。


「良かった。じゃあ、とりあえず乗って」


余裕の無い頭でも、視界に入っている車が左ハンドルだという事を理解して…


同時に自分には到底縁の無い物に、緊張が上乗せされてしまった。


そのせいで、踏み出そうとしていた足が止まってしまう。


「うわっ、ポルシェじゃん!」


そんなあたしに止(トド)めを刺したのは、通行人の好奇に満ちたような声音だった。


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