甘い誓いのくちづけを
初対面で、どこの誰かもわからない男性(ヒト)。


だけど…


その唇から優しい口調で紡ぎ出される言葉達は、もっともなものばかりで…。


あたしの心は、その男性の意見に素直に同意している。


文博は眉をしかめてはいるものの、さっきのように口を挟もうとはしていないみたい。


それはきっと、どこの誰かもわからない人の言葉に苛立ちを感じながらも、それ以上にあたしとの関係を終わらせる事を優先したいからなのだろう…。


右手でゆっくりと触れた、左手の薬指。


ただ、リングを外す事に踏み出す為にはそれ相応の勇気が必要で、伸ばした右手を中々動かす事が出来ない。


「ルカ」


すると、そんなあたしの気持ちを見透かすように、また優しい声が降って来た。


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