甘い誓いのくちづけを
実は昨日、さゆりに誘われてオープンしたばかりのカフェでランチをし、彼女と駅で別れた直後に声を掛けられたのだ――。


「あれ、瑠花ちゃん?」


その声に誘われるように振り返ったあたしの前に立っていたのは、一度だけ会った事のある男性(ヒト)。


ただ、その一度がとても印象深いものだったから、すぐに彼の名前が口から飛び出していた。


「英二さん!」


「久しぶりだね」


笑顔であたしを見る英二さんに、驚きながらも頷く。


「あれからちっとも店には来てくれないし、連絡先だってせっかく交換したのに電話もくれないし、寂しかったよ」


微苦笑を零しながらサラリと言った彼は、間違いなく女性の扱いに慣れているのだとわかって、苦笑を返す事しか出来なかった。


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