甘い誓いのくちづけを
「瑠花ちゃん、あいつから何も聞いてないの?」


小さく頷いたあたしに、英二さんは呆れたようにため息を漏らした。


「あいつ、いつも肝心な事言わないからなぁ。まぁ最近は忙しいみたいだし、自分の誕生日なんて忘れてるのかもしれないけどね」


「そういえば……。この間電話が掛かって来た夜も、何だか忙しそうでした」


数日前に理人さんから掛かって来た電話は、ほんの数分間話しただけで切った事を思い出す。


彼にしては珍しく、最初から最後までどこか慌ただしい雰囲気だったのだ。


「あぁ。あいつ、今度海外で立ち上げるプロジェクトの事で、今は……」


英二さんの話に聞き入っていると、彼はあたしの顔を見てハッとしたように口を噤んだ。


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