甘い誓いのくちづけを
「うん。でも急に雨が降って来たし、仕事が早く終わったから会社の前で待ってたんだ。だけど……」


前を向いたままの理人さんが、息を小さく吐いた。


「ごめんね」


どこか自重気味に添えられた謝罪に、小首を傾げてしまう。


今の話の中に謝罪をされるような事は無かったし、もし謝るのなら迎えに来て貰った自分(アタシ)の方だと思う。


そんな思いを抱いて口を開こうとした時、理人さんが微苦笑を零した。


「邪魔、したみたいだったから」


「え?」


少しだけ冷たい声音で紡がれた言葉に、ある可能性が頭の中を過ぎる。


それを鵜呑みにしてしまうのは、あまりにも図々しいと思ったけど…


それでも、どうしても訊かずにはいられなかった。


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