甘い誓いのくちづけを
「それって、課長……さっきの男の人の事ですか?」


「……駅まで一緒に行くつもりだったよね?」


繕われた笑顔すら消えた理人さんを見て、早急に事情を説明する必要がある事を悟る。


「あのっ……!それはたまたまです!」


身を乗り出してしまいそうになるのを、何とかグッと堪える。


「エレベーターを降りたら外勤してた課長とたまたま会って、傘を持っていなかったあたしを入れてくれただけで、別に一緒に帰ろうとしてた訳じゃないですよ?それに、課長はこれから接待があって、そっちに合流しなきゃいけなかったですし……」


そこまで話した時、理人さんの表情が緩んだ気がした。


さっき感じた可能性が、確信に変わりつつある。


あたしは思い切って、疑問を言葉にしてみる事にした。


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