甘い誓いのくちづけを
理人さんがオーダーしてくれたのは、グラスにオレンジが添えられたカシスオレンジだった。


飲み慣れたそれは、サッパリとしていて口当たりが良くて…


その上、先程の出来事も相俟って、すぐに飲み干してしまった。


こんな素敵なバーで一気飲みをするお客さんなんて、きっと自分(アタシ)くらいだと思う。


だけど…


今はアルコールの力でも借りなければ、笑顔を繕う事が出来そうに無かったから…。


いっその事、記憶が失くなる程アルコールに溺れたいくらいだ…。


「同じ物でいい?」


「あ、はい。すみません……」


「いいえ」


理人さんは、素敵なお店の雰囲気に不釣り合いなあたしに嫌な顔一つしないで、また店員に同じ物を注文してくれた――…。


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