甘い誓いのくちづけを
―――――――…



高層ビルが立ち並ぶオフィス街の中で、一際綺麗な外装のビル。


数分前にこの場に辿り着いたあたしは、その建物と対面したまま一歩も動けずにいた。


電話だと理人さんと上手く話せそうに無いからという理由で、仕事帰りに勢いでEdelsteinの本社フロアがあるビルに来たところまでは良かった。


ただ、そこはあたしの予想を越える大きさだった。


そのお陰で、場所を調べるのに苦労はしなかったけど…


私用でここに足を踏み入れるのは、どうしても躊躇ってしまう。


こんな事なら、心配して「付いて行こうか?」と訊いてくれたさゆりの申し出を、素直に受け取っておけば良かった。


彼女の好意を断った少し前の自分に、思わず深いため息が零れた。


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