甘い誓いのくちづけを

どうしよう……


電話をすればスムーズに事が運ぶのかもしれないけど、中々バッグから携帯を出せずにいた。


そんな中でビルに出入りする人達からの視線が刺さっている気がするのは、たぶん気のせいじゃない。


中には、明らかに不審がっている視線もあって、そろそろ警備を呼ばれるんじゃないかと不安になった。


やっぱり、電話する方がいいよね……


居た堪れなさから覚悟を決めて携帯を取り出した時、ちょうどビルから出て来た男性と一瞬だけ目が合った。


別に知り合いじゃないからと、すぐに視線を逸らしたけど…


その瞬間に違和感に似たものを感じて、もう一度視線を戻した。


「「あっ……！」」


あたしと男性の声が重なったのは、その直後の事だった。