甘い誓いのくちづけを
「あなたは、確か専務の……」


呟くように言った男性の名前が思い出せなくて、思わず眉を小さく寄せた。


「申し遅れました……。私(ワタクシ)、貴島専務の秘書の相模と申します。先日は大変申し訳ありませんでした」


「あっ、いえっ……!あの、荻原瑠花と申します」


深々と頭を下げられて、あたしも釣られてしまう。


「お名前は、以前から存じ上げておりました」


程なくして顔を上げると、相模さんはほんの僅かに躊躇うような表情を浮かべてそう言った後で、あたしに真剣な眼差しを向けた。


「貴島専務なら、つい先程帰られたところですが……」


「そう、ですか……」


ようやく覚悟を決めてここに来ただけに、何だか肩透かしを喰らった気がした。


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