甘い誓いのくちづけを
抱えた疑問を押し退けるように背筋を伸ばすと、英二さんは視線を落とした。


「その少し後に、あいつは家を出る事も視野に入れて海外に留学した」


理人さんは、家を出る事を考える程ショックを受けたって事……?


「1年経って帰国した時も、たぶんあいつはそのつもりだったと思う。理人は何も言わなかったけどね……」


事情がわからないのに、胸の奥がギシギシと軋む。


悲しみと痛みを抱えたあたしに、英二さんが小さく笑った。


「そんな時、理人は瑠花ちゃんと出会った」


「え?」


突然出て来た自分の名前に、キョトンとする。


だって…


英二さんの話に出て来た理人さんはまだ21歳くらいで、あたし達は出会っていないはずだから…。


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