甘い誓いのくちづけを
未だに楽しげに笑う英二さんを見つめたまま、ようやく少しだけ整理出来た頭の中から言葉を選ぶ。


「つまり……英二さんもずっと前からあたしの事を知ってた、って事ですよね?」


「俺の場合は顔がわかるってだけだから、知ってたって程じゃないよ。ただ……俺、一度会った女の子の顔は滅多に忘れないんだよね」


「え?」


「まぁ、もちろん全員覚えてるって訳じゃないんだけど、瑠花ちゃんの場合は理人の事があって印象が強かったから、すぐにわかったんだ。それに、瑠花ちゃんは可愛いからね」


今は、さりげなく付け足された軽口に突っ込む余裕も無くて、黙ったまま英二さんの次の言葉を待っていた。


彼もそれを感じ取ったのか、自嘲気味な笑みを浮かべた後で息をフッと吐いた。


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