甘い誓いのくちづけを
「あのっ……!」


「じゃあ、またね」


歩き出していた英二さんは、呼び掛けたあたしに顔だけで振り返って笑顔を見せ、再び前を向いてしまった。


引き止めようかとも考えたけど、彼の言う通り理事長の元に行く事を優先するべきな気がして…


「ありがとうございました。絶対に、理人さんとちゃんと話しますからっ……!」


少しずつ離れていく背中に向かって、ヒントとアドバイスをくれた事へのお礼と、そして決意を告げた。


英二さんは振り返る事無く軽く手を振って、駅に続く角を曲がった。


その姿を見送った後、あたしは真っ先に理事長室に向かった。


ちょうど昼食時だからか、各部屋から声は聞こえて来るものの、庭や廊下で先生や子ども達に会う事は無かった。


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