甘い誓いのくちづけを
ゆっくりと深呼吸をして、理事長室のドアをノックする。


「どうぞ」


すると、すぐに返事が飛んで来た。


「失礼します」


「あら、少し遅かったわね」


「あ、すみません……」


目尻にシワを刻んで微笑んだ理事長に頭を下げると、理事長が悪戯な笑みを浮かべた。


「女の子好きなお兄さんにナンパでもされたのかしら?」


冗談めかした言葉よりも、そこに何かが込められている事に気付いて思わず目を見開いてしまう。


「『あまり引き止めないでね』って、伝えておいたんだけど……。英二君、随分と長話をしたみたいね」


理事長は、英二さんの名前を強調した後で悪戯っぽくフフッと笑って、言葉を失っていたあたしをソファーに促した。


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