甘い誓いのくちづけを
知りたい事が多過ぎて、ソファーに腰掛けるよりも早く口を開いていた。


「英二さんと……お知り合いなんですか?」


「英二君は知人の友人でね、昔からの知り合いなのよ」


知人の友人……?


理事長の答えが回りくどく思えて、眉を小さく寄せる。


「少し長くなりそうだから、コーヒーを淹れるわね」


そんなあたしを余所に、理事長は笑顔のまま背中を向けた。


そうなる事が最初からわかっていたかのように、理事長室の片隅には普段は無いはずのコーヒーセットが置かれていた。


これから理事長から語られる話にはコーヒーを飲める程の時間を要する事を、どんな言葉よりも雄弁に物語っている気がする。


ポットからカップにお湯が注がれた瞬間、コーヒーの香りがフワリと漂った。


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