甘い誓いのくちづけを
見て見ぬ振りをする事が解決になると、本気で思っていた訳じゃない。


もちろん、時にはそうする事が必要な時もあるのかもしれないけど…


今回に限ってはその選択は間違いだと、最初からわかっていた。


少しでも早く話し合うべきだと、浮気に気付いた直後には既に感じていた。


それでも文博に詰め寄る事は疎(オロ)か、あたしには彼ときちんと向き合う勇気すら無かった。


見て見ぬ振りをしていればいつかは文博の目が覚めるんじゃないかと、心のどこかで思っていたから…。


確かに、彼の目は覚めたのかもしれない。


婚約者の自分(アタシ)では無く、顔も知らない“彼女”への想いを自覚した、という意味で…。


結果として、文博はあたしとの関係を終わらせる決意をしたのだから…。


< 44 / 600 >

この作品をシェア

pagetop