甘い誓いのくちづけを
「あの時は、本当に酷な事を訊いてしまったわね……」


理事長は申し訳なさそうに笑って、コーヒーを一口飲んでから再び口を開いた。


「初めてここに来たのは、あの1年くらい前だったかしら?」


「確か、そうだったと思います」


「でも、あなたの家からは遠くて簡単には通えないからって、長期休暇を利用して史子(フミコ)さんと来てくれていたから、まだ数回しか来た事がなかったのよね」


「はい」


「それなのに……まだ高校生だったあなたを泣かせてしまったわ……」


「そんな……。あれは、理事長のせいじゃないです」


否定したあたしに、理事長が眉を寄せて微笑んだ。


あたしは、理事長の瞳を真っ直ぐ見つめた。


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