甘い誓いのくちづけを
確かに想いを言葉にする事は少なかったけど、それでもちゃんと伝えていたし、わかってくれていると思っていた。


「瑠花はそう思ってくれてたのかもしれないけど、俺にとっては物足りなかったんだよ」


それなのに、文博があまりにも寂しげに笑うから、言葉を飲み込んでしまう。


「だから、瑠花がボランティアに行く日に俺と会うように無理言ってみたり、挙げ句の果てにはボランティアをやめるように言ってみたり……。今思えば子ども染みてたんだけど、それでも瑠花の気を引こうと必死だったんだ」


聞き慣れた文博の口調は、淡々としているはずなのに…


今日の彼の声音はいつになく穏やかで、胸の奥が締め付けられる。


あたしは自分が思っていたよりもずっと、文博の事を大切に出来ていなかったのかもしれない。


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