甘い誓いのくちづけを
今なら、よくわかる。


傷付いたのは自分(アタシ)だけじゃなかったのだ、って事…。


「ごめん、なさい……」


その気持ちから素直に零れた言葉は、小さく震えていた。


「何言ってるんだよ……。謝るのは俺の方だろ?」


向けられた眉を寄せた笑みがとても柔らかくて、胸の奥が掴まれたように苦しくなる。


そうだったね……


文博(コノヒト)は、こんなにも優しく笑える男性(ヒト)だった。


そんなところも、好きになった理由の一つだった。


それなのに…


いつからか、それを忘れてしまっていた。


最初は確かな想いがあったはずなのに、いつの間にか好きだったところさえも忘れてしまう程に向き合えていなかったのかもしれない。


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