甘い誓いのくちづけを
その間、理人さんと彼の両親はどんな思いでいたのだろう…。


20年間ずっと“親子”として過ごしていたのに、そんな形でしか接する事が出来なかったなんて…。


「これは、帰国してから聞いた話だけど……。貴島の両親は子宝に恵まれなくて、養子を考えていたらしいんだ。そんな時にかねてからの友人夫婦が事故で亡くなって、身寄りのない子ども(オレ)だけが生き残った。だから、二人は俺を養子として迎える事に『迷いなんかなかった』って……」


息を吐いた理人さんは、どこか遠くを見つめるように正面の壁に視線を遣った。


「それが幸せな事だってわかっていたけど、色々な感情が邪魔をして素直に受け入れられなかった……」


この時初めて苦しげな表情を見せた理人さんを少しでも守りたくて、彼の右手をそっと握った。


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