甘い誓いのくちづけを
「子どもの頃からずっと祖父や父の仕事を見て来たから、自分が養子だって事を知るまでは当たり前のように貴島の会社を継ぐつもりだった。だけど……」


その時の理人さんは、一体どれだけ傷付いたのだろう…。


「血が繋がってないと知った時、自分(オレ)にはそんな資格なんてないと思えて……」


計り知れない傷(イタ)みに、思わず唇を噛み締めてしまった。


「ちょうど留学の話が出ていた時だったから、貴島の家を出る事を視野に入れて逃げるようにLAに留学した。当初は半年の予定だったんだけど、気持ちの整理が付かなかったからそのままカナダやイギリスにも留学して、1年してから帰国したんだ」


「その間、ご両親とは……?」


「何通かの手紙と、一度の電話だけ。それも、当たり障りのない内容だったよ」


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